滑皮さんはあと15日で八歳になる予定だった。彼を奪ったのは多発性骨髄腫。最期は突然「プオー!」という悲鳴を上げながら走り出してそのまま倒れてしまった。旦那の心臓マッサージも空しく、虹の橋へ旅立ってしまった。
今は火葬場で滑皮さんを骨にしているが、涙が止まらない。
滑皮さんが来なければ、私たちは別れていただろう。そして私はリハビリを放棄して、いわゆる「患者様」になっていた。滑皮さんが熱い視線を向けてくれなければ、私は素通りしていただろう。彼が来てから家庭が明るくなった。彼がいなければ、私の家ではない気がする。
彼は私の心の炎であり、親友であり、息子。かけがえの無いものだ。それを亡くしてしまい、何を支えに生きれば良いのだろうか。
死後硬直と瞳の濁りで彼の死を悟った。彼は私に大切なものを思い出させてくれた。それは…。
かつて愛して見送ったクロベエとの記憶。よく滑皮さんがピンチになると、夢に出てきた。そしてクロベエが滑皮さんを守ってくれていた。滑皮さんとの日々は、クロベエが私に長い間忘れられていた「無償の愛」というものを思い出させてくれた。滑皮さんはクロベエの差し金だろうと思った。
素敵な日々をありがとう、滑皮さん。
君が教えてくれたものは忘れない。
君は私の心の中で生きている。
天国でたくさん目を閉じて寝たり、相棒の高田と走り回ってね。
ずっと愛してるよ。